Inscryption の感想: ネタバレあり

steam 版
ネタバレ少々

Inscryption

ローグライトカードゲームです。

ジャンルを説明する段階で革新に迫るネタバレをしかねないのですが、
ネタバレありって言ってるし正直に言うとローグライトカードゲーム + 脱出ゲーム、です。
少なくとも俺はカードゲームと脱出ゲームがセットになったゲームというレビューだけ見て買いました。

ストーリーは大風呂敷広げて回収しきらないタイプ

作者の前々作こと Pony Island はプレイ済みです。
Pony Islandの感想 - sibogli :'(

Pony Island のように、現実に存在する人物だったり都市伝説だったりを仄めかすものの、
本筋にはほとんど関わってこない要素(確かこれ固有名詞あったはずです)が含まれています。

例として、今作の場合は OLD_DATA という登場人物から悪魔同等に忌み嫌われているラスボス的存在がいるのですが、
それに関してナチスとの繋がりを断片的に示すのみで、
決して本筋には影響がなく、ぶっちゃけ「悪そうなもの」って認識さえあれば一応話の流れが理解できるようになっています。

しかし、気を引くような要素を散りばめて謎を追いかける高揚感を演出するばかりで、
実際に回収されてはいかないものも少なくないので、少々がっかりしてしまいました。
無理やり考察する楽しみはあるんでしょうがゴールは欲しいです。

カードゲームとしてはバランスが悪く易しい

カードゲーム初心者の俺でもクリア自体はできました。
あんまりシナジーがあるカードの組み合わせがないデザインになってはいますが、
初動で即ライフを削り切る編成にしておけば大抵は勝ち切ることができます。

ルールが変わり続けることの楽しさ

飽きない、と言いたいところですが、さすがに P03 編は冗長すぎて若干飽きました。
最初のレシー編だけではそれなりに面白いと思います。

カードゲームとしても脱出ゲームとしても半端

基本的にはメタ要素のある脱出ゲームの方を評価するゲームになるかと思いますが、
脱出ゲームとして特に凝った仕組みはないです。

カードゲームだと思って買ったら脱出ゲームだった!ってプレイヤーならインパクトが強く印象に残ったのかもしれませんが、
正直事前に知っていたので「あーこういう感じのゲームか」で終わってしまいました。
でも単純なカードゲームなら Slay the Spire ほど面白く完成されたゲームじゃないと手を付けてないでしょうし、どう宣伝するか本当に悩ましいゲームですね。

本編は ARG の方

カードゲームでも脱出ゲームでもなく、現実とゲームをリンクさせて楽しむ ARG が本編である、と結論付けなければなりません。
そのような側面が非常に強いゲームであったことを知ったのはクリア後です。

発売日に買ってリアルタイムでプレイヤー同士で協力しあって謎を解くコミュニティに属していれば、至上の楽しみが得られていたのだと思います。
追体験も可能ではあるのですが、一部どうしても追体験が不可能な要素があるため、割り切って当時の流れをまとめた記事を読むのが落としどころかなぁと感じています。

おそらくは、過去作をプレイしたファンに向けたいわば内輪ネタとして発売したものの、
思いのほかヒットしてしまったために起きてしまった熱量のギャップがあるのだと思います。
謎解きの中には作者の前作を経験していればすぐに気が付くポイントもあったのが根拠です。

グラフィック等の雰囲気作りや演出は最高

この点は本当にすごいです。
正直本筋はそこまで複雑でないのですが、ストーリーを彩る演出は非常に独特で手放しに評価できるものでした。
この点だけでもぜひ味わってほしいです。

雑感

サマーセールで 1,435 円で購入して 1 周クリアまで 17.4 時間でした。

カードゲームがやりたいなら素直に Slay the Spire をオススメしますし、
凝ったストーリーが目的なら別に本作じゃなくてもいいような気がしました。
ただ、レシー編だけはボリューム的にも飽きずに楽しめるものでとても良かったです。

ARG がとっくに終わってしまっている今、脱出ゲームであるということを知らずに購入すればたぶん面白いゲームです。
そのハードルはとても高いと感じています。難しいです。