7 days to end with you の感想

steam 版
ネタバレあり

7 days to end with you

ADV。
記憶喪失の主人公目線で展開され、よく存じない女と 7 日間を過ごすゲームです。

本作オリジナルの言語でやり取りを行い、どの言語がどういった意味を持つのかをひたすら推理するものです。

オリジナル言語

オリジナル、と言っても英語およびアルファベットの単純な置き換えであることにどこかの段階で気付きます。
途中からは「n 文字目と m 文字目に同じ文字が使われてるからあの英単語だ」といった推理が頻繁に行われます。
おそらくこの仕組みに気付けなければ、話を追うことはかなり困難を極めるのではないかと思っています。
("material"あたりで早々に気付きました。地下へのパスワードで文字数がアルファベットと同数だとかプレイヤーに気付かせる仕組み自体はあります)

言語を推理させるゲーム自体は別にこのゲームが初出ってわけではないので、斬新な要素として評価することはできません。
言語推理を誰でも攻略できる難易度まで落として、かつそれをメインに押し出したゲーム、としてはかなり完成度が高いのかもしれません。
ただ、それも英語ベースだから簡単だったというのがあるのでまあなんとも言いようがない感じです。

割と単純なストーリー

そうじゃないと言語推理ゲームを成立させるのは大変なので、そこは多少妥協したのかなと思いました。

ただ、細部をあえて作ってないのかはともかく、考察の余地を多く残してしまうストーリーになっています。
個人的には風呂敷を畳まない作風はそもそも畳むための力がないようにも解釈できて大嫌いですが、
本作においては正直残ってる細々とした謎が、世界観を根本からひっくり返しかねないようなびっくり箱にはなり得ないと思ってるので、
それもありなのかなと消化しています。

女の子が何者であろうとも、彼女自身の記憶を元に都合のいい主人公を作っては 7 日間過ごしたいだけのサイコパス、という事実はひっくり返りようがないですしね。

ドット絵グラフィックが良い

雰囲気出てていいですよね。
女の子かわいいです。

雑な考察

鏡を割る理由が特にない

姿見になり得るものは鏡以外にも、窓や写真の壁掛けやフラスコ等のガラスから、家のそこら中にある液体でも構いません。
なんなら首から下の部分であれば目視できます。
本当に主人公に自分の姿を見せたくなければ鏡だけを割る理由はないのです。

本作開始段階で既に錬金術を何度も試行している形跡があることから、
あるループで主人公が発狂して鏡を破壊したのかもしれませんが、
割れた鏡をあえて放置するのは危険ですし、意図がよく分からないことになります。

結論: プレイヤーに主人公の容姿を想像させるための舞台装置

可視領域にあるものは容易に考察の動機になりますが、不可視領域はそもそも頭を働かせないと難しい場合が多々あります。
あえて割れた鏡を置くことで、「そういえばこの主人公はどんな顔してるんだろう」「なんかおかしいぞこの家」と意識させることができるのです。
それが 1F のあんな目立つところに置いてありますので、後々に出てくる主人公の浅黒い腕を注視することができます。

ということなので、できればゲーム内で無理やりにでも世界観的に納得させられる理由が欲しかったです。

主人公の容姿

まず、新聞記事の(おそらく生前の)主人公は明らかに肌が白いのですが、
首絞めシーンや割れた鏡に映っている主人公は明らかに肌が黒いです。
錬金術といっても 0 から 1 を生み出すわけではないので、単純な皮膚の移植かとも思うのですが、毎回のように黒い肌で生まれてくる理由は分かりません。

次に、調査に来た男に対して女の子は「戦争被害者で負傷している」という説明をして、
男は実際に目視で確認してそれを了承しています。
つまりはただ怪我をしている人くらいには違和感のない見た目ではありそうです。

干し肉

家のキッチンには植物と一緒に干されている肉があります。
また、戦争が終結したことを宣言する新聞記事上では食料危機が発生していることも伝えられています。
そして、女の子は基本的に主人公に付きっ切りです。
更に、錬金術には大量の死体を必要とします。

植物は家庭菜園で賄えますが、肉に関してはどこで何を調達するのでしょうか?

男の訪問はなぜ毎回行われるのか

時間が文字通り流れているとするならば、女の子が毎日同じ言葉を発するところまでは問題ないのですが、
外部者である家を調査しに来た男の訪問に疑問点が浮かんできます。
なぜ彼も一言一句同じ言葉を発するのでしょうか?

時間がループしているわけではないとすると、無理やり強引に解釈するなら訪問してきた男もグルである、ということになります。
毎回毎回同じ問答を行い、時には地下室で殺されてその要員を補充するのです。
いや、本当は死んでないのかもしれませんね?

結論: 本作は new game 時に特定の日時から常にスタートさせられている

ゲームをインストールしてから何度か new game するかと思うのですが、
我々はゲーム世界のある 7 日間だけを切り取って繰り返し見ているに過ぎず、
例えば 1 週目の世界と 2 週目の世界は同じ日時のものが展開されている、と解釈しなければなりません。

この問題をここまでややこしくしているのは 2F の錬金術の回数カウンターです。これがなければ何もなかった。
日時設定(開始地点)だけは常に同じで、カウンターは new game のたびに変化している設定だと思わなければ男の訪問が矛盾点まみれになってしまうのです。
つまり、男の訪問は常に初回のものなのです。

こういうところが結構あるからあんま好きじゃなかったりするゲーム

ラストシーン

唐突な英語。誰もが頭の上に「?」を浮かべたに違いない。

そもそもの話、架空言語が英語ベースだから「主人公だけが英語を架空言語と認識してしまってる」説を考えたのですがどうでしょうか?
でもそれだと女の子と訪問者との会話がめちゃくちゃ片言でわけわからなくなるんですよね。破綻してます。
「主人公の異常な言語中枢フィルタを通してるから実際には流暢」説ですか?
畳まれてない風呂敷って本当にクソだなって思いますね

じゃあ別の英語圏でやり取りされている国でのワンシーンを描写したものですか?
そこにあえて架空言語で女の子の名前に"?"を記述したメモを見せる意味ってなんですか?
そもそも誰だよこいつら。破綻してます。

結局これも割れた鏡と同じでゲームの世界観なんて糞喰らえ、プレイヤーへのメッセージだ!って解釈すべきですか?
じゃあ何が伝えたかった?

結論: ある種の救い

本作ではおそらく、錬金術の完成まで漕ぎ着ける未来はないのでしょう。
女の子との無理心中が終着点です。どう足掻いてもバッドエンドなのです。

それはともかくとして、なんかどっかの異世界に二人で仲良く飛んで錬金術の概要を学習している、
みたいなハッピー俺ら救われたぜエンドを演出したのかな、と思いました。
架空言語のメモは"錬金術"の英単語を見て唐突に頭に沸いてきた謎のイメージを伝えてるだけです。
荒唐無稽すぎないか?

一応、錬金術そのものを研究および実践するのではなく、錬金術の概要を学ぶ段階(初歩の初歩)ということで、
自らが大量の死体から主人公を錬成し続ける錬金術の負のループからは脱出できたよ、というメッセージとしても読み取ることができます。
彼らはこれから普通の人生を歩み、幸せに往生するのです。
やっぱりこれ荒唐無稽じゃないか?

余談 :She is beautiful に若干似てる描写がある

https://tonarinoyj.jp/episode/3270296674393788392

たぶん 7dtewy の方が先です。
寝ると記憶を失う少女に毎日同じセリフをかけ続け、外界との関わりを断たせようとする。
その動機として"一緒にいたかったから"といったものが(確か)ありました。
このゲームを遊んでてなぜか既視感を覚えたんですが、シチュエーション的にはほぼほぼ同じことをしてました。

おそらく記憶ループもののテンプレの 1 つなんでしょうね。

雑多

790 円で購入して全エンド見るまで 6 時間でした。
全部自力でクリアした後にネタバレを読むことをお勧めしますが、新聞記事の解読くらいしか新しい知見は得られないと思います。
言語推理もストーリーも平易であるため、基本的に外部からのヒントが不要でゲームだけで完結できるのが最大の魅力ですね。

結論から言えば他人に面白いという文脈での紹介はあまりしたくない、というのが率直な感想です。
"最近ゲーム始めました"みたいな人になら難易度の低さも相まってハマるかもしれませんが、
それなりにやってきてる人は架空言語の推理は既に通ってきてる道だと思うので難しいです。

ストーリーもこれがオムニバスの一つだったらいいかもしれませんけど、あれで全てのボリューム感ですからね。
インディーズゲームに何を求めてるんだと言われたらそれまでです。

FEZ の言語推理ってやたら難しかったよな

あれくらい高難易度にするともはや解く気が失せるので、本作よりちょっと難しくする程度がちょうどいい気がする