If found... の感想

ネタバレあり

steam 版

If found...

一本道サウンドノベル
システム上では特に目新しい要素はありません。

LGBT

もはや随分前から始まっていたような気がするポリコレの流れを継いだものです。
登場人物の大半が性的少数派のいずれかに属しており、ちゃんとそれらしい恋愛の様子も描かれます。
主軸が明らかに「性的少数派である自分が社会とどのように付き合っていくか」に置かれているのでそういう話の展開です。

消しゴム→鉛筆

マウスカーソルが消しゴムなのは自分や社会を否定したかった頃の自分を象徴しており、
それが鉛筆になってからは全てを受け入れて挑戦していく意志を象徴している、
とは読み取れますがぶっちゃけその起点となる出来事にそこまでの説得力がないです。

性的少数派としての目覚めと社会からの目に気付いた主人公にとっては世界の終わりかのように感じられるものなので、
対比として世界を破滅に導くブラックホールに立ち向かうパートと同時進行していきます。

我々からすると"そこまでの物なの?"とも思いますが、
多感な年齢に LGBT 問題が乗っかってるのでおそらくそこまでの物なんでしょう。
狭い家、というか狭い人間関係の中で安らぎを得たり反発したりするものなので、
これを拡大解釈してブラックホール問題にまで発展させるというのはいささか主語が大きいような気もします。

いくつかのキャラは複数の名前を持つ

ストーリーの解釈をややこしくしている側面もあるので、あまり導入すべきではない設定かとも思います。
俺は好きな方です。

他人から与えられた名前を捨て、自分で何らかの名前を擁立し、
「本当の自分はこちらである」とアピールするためのものです。
戸籍に反発したくなる気持ちは分からないでもないです。

最終的には名前を含めて与えられた環境に対する受容を行うのですが、
読み物としてはなかなか癖のある要素だったとは思います。

家族

主人公の家族は「普通であってほしい」という気持ちに少々の苛立ちと失望を含めて主人公に浴びせます。
彼らは心から主人公を愛しており、主人公が傍若無人な立ち振る舞いをしても諦めず最後まで声をかけ続けています。

本作ではとても狭い世界での普通でない自分への反発の象徴として家族がいます。
最終的には彼らの愛を受容するわけですが、単純に彼らを受け入れるためには普通でない自分を否定するしかないと視野狭窄な選択肢だけを持ち続け、拗れるのが主人公です。

結局のところ受容するんですけど、心変わりというか決意を抱くための出来事が「極限状態まで自分を追い込んだ時にも相も変わらず手を差し伸べてくれた」とかいう、
性的少数派への理解もクソもないもので"本作の主題的には何も解決してねえじゃねえか"という感想を抱かずにはいられませんでした。
もうちょっとプレイヤーが納得できるような描写はなかったものか。

あえて和解を描写していないのか?

正直分かりませんが、作中で描かれた消しゴム時代の終着点とその後を埋め合わせるための材料は絶対に足りてないと思っています。
個人的な感想ですが、このギャップを埋められるだけのものが書けなかったのかな、というのがちょっと思ってしまったところです。

雑感

セール時に 660 円で購入して 2.7 時間でエンディング。
LGBT を全面に出したゲームというのはなかなか珍しいですが、本当にそれだけなのであまりオススメはできないかなというのが正直なところです。

お話的には決して理解できないものではなく、絵本のような単純明快なものです。
しかし、重要なところが故意か否か描写されておらず、肩透かしを食らってしまいました。